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HOME  / ブログ / 「スパイラル」名曲のツボ / ジョンゲン:オルガンと管弦楽のための協奏的交響曲

ジョンゲン:オルガンと管弦楽のための協奏的交響曲

ミューザ川崎シンフォニーホールと東京交響楽団がお贈りする「名曲全集」の聴きどころを演奏者の視点から語る好評連載「名曲のツボ」。
今回は特別篇として、ジョンゲンの「協奏的交響曲」でソリストを務めるオルガニストの三原麻里さんにお話を伺っています。ミューザでは、優秀な演奏家に協奏曲の演奏機会を提供する「ミューザ・ソリスト・オーディション」を開催しており、三原さんは2014年に行われたオルガン部門の合格者です。どうぞご期待ください!

オルガンは、協奏曲のソリストであり、交響曲でのオーケストラの1パート
万華鏡のような4つの楽章をお楽しみください!

オルガン奏者 三原麻里(MUZAソリストオーディション2014合格者)

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こんにちは。三原麻里です。私はフランスで4年間学びつつ演奏活動をして、2015年に帰国しました。シャルトル国際オルガンコンクール優勝後、フランス各地のフェスティバルに招かれ、数々の名器(特に素晴らしかったのは、オルレアンにあるカヴァイエ=コルの楽器。フォンダンショコラのようにとろける音でした!)を弾いた経験を活かし、現在は日本を拠点に国内外で演奏活動をしています。
ジョゼフ・ジョンゲン(1873~1953)はオルガニストでもあったベルギーの作曲家です。「協奏的交響曲」はオルガンの“立ち位置”が不思議な作品で、曲の最初から最後までオルガンはずっと弾きっぱなしです! この曲を協奏曲とみればオルガンはソリストであり、交響曲とみればオルガンはオーケストラの中の1パート。その両方の役割をオルガンが果たすから、弾きっぱなしなのかもしれません。
ジョンゲンの音楽は、フランクのようであり、フランクが影響を受けたワーグナーのようでもあり、さらにドビュッシーも感じさせ、後の時代のコルンゴルトのように映画音楽的、といろいろな顔があります。「協奏的交響曲」は4つの楽章からなりますが、すべて性格が異なる、万華鏡のような音楽です。フーガで始まる第1楽章は形がしっかりした曲なので、私には“四角く収まった”イメージがします。第2楽章「ディヴェルティメント」はスケルツォ的な音楽と思いきや、挿入されるコラール的な音楽が本当に美しく、まるで教会でオルガンが鳴り響いているようです。第3楽章「モルト・レント」はドビュッシーのような音楽ですが、盛り上がるところはガーシュウィンのようにも感じます。そして第4楽章「トッカータ(無窮動)」はスーパーマンが出てくるような(笑)ハリウッド的な音楽で、強烈な印象を残します。
第4楽章は無窮動ですからずっと16分音符を弾いていますが、オルガンの鍵盤は構造的に重いのでつらいんですよ。楽譜通りのテンポで弾いたらパイプが鳴りきらないので、一生懸命弾いても聞こえないという(苦笑)。ジョンゲンはフィラデルフィアのオルガンのためにこの作品を作曲したのですが、もしかしたら鍵盤が軽い構造の楽器だったのかも。「名曲全集」では、もしも指揮者がとても速いテンポを希望されたら、メインコンソールでは難しいのでリモートコンソールで演奏するかもしれません。それくらい第4楽章は無茶な曲なのです。
「協奏的交響曲」で私が特に好きな部分は、第1楽章の冒頭です。オーケストラの低音が鳴るなかフーガが展開し、「何が始まるんだろう」とワクワクさせてオルガンが登場する響きは実に劇的だと思います。第2楽章のコラールも好きで、オルガンはもちろん、オーケストラが再現するところがものすごく美しいです。
オルガンは“1人で弾くオーケストラ”ですから、「協奏的交響曲」は言わば2つのオーケストラが協奏する交響曲です。ホールに満ちわたるオーケストラとオルガンの“音の圧”と、多彩なキャラクターの渦に包まれて、ライブならではの興奮を味わってください!

「スパイラル」vol.51(2017年1月1日号)より転載/取材 榊原律子

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第124回 アジアを代表する女流指揮者&若手オルガン奏者による共演

日時 2017. 2.4 (土) 14:00開演

出演
指揮:シーヨン・ソン
オルガン:三原麻里(ミューザ・ソリスト・オーディション合格者)

曲目
J.S.バッハ(L.カリエ編):小フーガト短調(オーケストラバージョン)
ジョンゲン:オルガンと管弦楽のための協奏的交響曲
ムソルグスキー/ラヴェル:組曲「展覧会の絵」

公演詳細はこちら

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1月12日「MUZAランチタイムコンサート」では、ジョンゲン:協奏的交響曲の第2楽章をピアノ伴奏で演奏。終演後には三原麻里さん、森本麻衣さん(ピアノ)、近藤岳さん(MUZAホールオルガニスト)によるアフタートーク会が行われました。(撮影:青柳聡)

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