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オルガンの名手中の名手にして真の総合的音楽家、ベルナール・フォクルール(文・林田直樹)

2015.10.22

From_Muza

オルガン奏者ベルナール・フォクルールによるパイプオルガン×映像プロジェクト「暗闇と光」は、世界各地で上演され絶賛を博し、今年11月満を持してミューザで日本初演を行います。この公演に先立ち、音楽ジャーナリストの林田直樹さんにフォクルールの魅力をご紹介いただきました。
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ベルナール・フォクルール公演に寄せて
文・林田直樹(音楽ジャーナリスト・評論家)

現代最高のオルガニストの一人であり、オペラ・プロデューサー、作曲家、研究者、教育者――つまり総合的な音楽家として、並ぶもののない稀有の存在、1953年ベルギー出身のベルナール・フォクルールが、11月3日(祝・火)にミューザ川崎でついにその本領を発揮する。
前代未聞の「映像とオルガンのコラボレーション」を行うのだ。

フォクルールは、J.S.バッハのオルガン作品全集をはじめ、シャイデマン、ブクステフーデ、トゥンダー、ヴェックマン、ラインケン、ブルーンスなど北ドイツオルガン楽派の作曲家を中心とした数々の録音を達成する偉業を成し遂げてきた。
その一方で、ブリュッセル・モネ劇場総裁、エクサン・プロヴァンス音楽祭芸術監督、つまりオペラや音楽祭のプロデューサーとしても1990年代から辣腕を振るってきた。
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こんな人物は他にいない。
数百年もの過去を探究するオルガン演奏と、現代の劇場や音楽祭におけるオペラの革新的プロデュース。この一見対照的な聖と俗、教会と劇場という世界の双方において、これほどのクオリティで仕事を成し遂げてきたということ自体が、驚異的ではないか。

フォクルールは近年、普通のオルガン・リサイタルではなく、「暗闇と光」と題された、映像(オーストラリアの映像作家リネット・ウォールワースによる)とオルガンによるコラボレーション・コンサートを世界各地で行っているが、それがいよいよ日本でもミューザ川崎のみで上演される。
これに足を運ばずしていられようか。

オルガンとは、その土地、その教会、そのホールに深く根をおろす唯一性をもつ、最大にして最複雑な楽器である。ツアーをするオルガニストは、ある意味ビジターとして、慣れない楽器を扱う宿命にある。

ところが、フォクルールはその点凄かった。彼の生演奏を数年前に某ホールで聴いたときの驚きは、いまもなお鮮烈に記憶に残っている。
オルガンを扱うその激しいパッションと華麗な技巧、そして音色の選択のセンスは、レコーディングでの端正な演奏ぶりとはまた異なるもので、聴き手の魂を深く揺さぶる、まったく特別な体験であった。ビジターとしてのハンディなど全く感じさせないどころか、そのホールのオルガンを完全に薬籠中に収め、熱狂的な音楽を作り上げたのである。
あのとてつもない演奏が、国内最大級のミューザ川崎のオルガンで聴けるのかと思うと、しかも映像つきとなると、これはもう、胸の高鳴りを抑えきれない。ミューザのオルガンは音量調整可能な尺八や笙のストップまで備えているというが、フォクルールはそれもきっと活用するのではなかろうか。
なぜって、ブクステフーデやバッハなどはもちろんのこと、メシアン、グバイドゥーリナ、さらには細川俊夫や自作まで数百年ものレパートリーを自在に網羅した、実にユニークな曲目構成になっているのだから!

なお、ミューザ川崎での映像とのコラボレーション以外に、横浜みなとみらいホールでのバッハ中心の通常のリサイタルが、10月31日(土)に行われる。こちらもぜひ注目したい。

今度こそ、一人でも多くの聴き手に、オルガンの名手中の名手にして真の総合的音楽家、ベルナール・フォクルールの生演奏に接してほしいと、心から願っている。

公演情報
ベルナール・フォクルール
パイプオルガン×映像プロジェクト「暗闇と光」(日本初演)
◎日時
2015. 11.3 (火) 15:00開演
◎出演
パイプオルガン:ベルナール・フォクルール
公演詳細はこちら

Lynette Wallworth: Darkness and Light (2014) from Forma Arts on Vimeo.

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