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HOME  / ブログ / 「スパイラル」名曲のツボ / マーラー:交響曲第2番「復活」

マーラー:交響曲第2番「復活」

フェスタサマーミューザKAWASAKI2015のフィナーレコンサートで演奏されるマーラーの交響曲第2番「復活」。マーラーの交響曲には特殊な打楽器が多く使われています。CDを聴いているだけではわからない音色に、あれはどんな楽器?と不思議に思うこともあるのではないでしょうか。今回は、東京交響楽団打楽器奏者の綱川淳美さんにそんな楽器のひとつ「ルーテ」について伺いました。

細い棒を束ねた楽器「ルーテ」
音色のイメージは、ムーミン谷のスティンキー?!

打楽器奏者 綱川淳美

綱川淳美_クレジットナシ

 マーラーの交響曲ではさまざまな打楽器が使われますが、交響曲第2番「復活」に登場する、ドイツ語では「枝」という意味の楽器「ルーテ」をご紹介しましょう。日本語では「むち」と表記されています。マーラーは使いたい音色を考えたとき、細く長い枝を束ねたものを叩く音に辿りついたのでしょうね。楽器として決まった形はなく、楽団によって太さや材質はまちまち。打楽器パートでは、指揮者の求める音色、そして私たち自身が出したい音のイメージを膨らませて、楽器を調整したり、叩くものを選んだり、時には楽器を製作して、音色を作っていきます。このように「音を探す」作業は打楽器の醍醐味です。大抵は、大太鼓の縁や胴等を叩きます。

ルーテ

 「復活」でルーテが出てくるのは第3楽章です。オーケストラの中でかなり異彩を放つ音色な上、演奏姿が客席から見えづらいのでミステリアスに感じることでしょう。この楽章でのルーテの音の私のイメージは、「ムーミン」に出てくるスティンキーというキャラクターです。こげ茶の毛むくじゃらのスティンキーは、ムーミン谷でつまはじきにされ、仲間たちに染まることはありません。でも、彼が動けば、その存在を周囲に確かに感じさせます。ルーテはソロを演奏することはなく、他の楽器と一緒に16分音符を刻んだり、3拍子を刻んだり、みんなの中で見え隠れしています。それがまさにスティンキーのような存在を感じさせます。

(参考:ムーミン公式サイト「スティンキー」

 「復活」では、ルーテのほかにも打楽器が活躍します。なかでも第5楽章の途中、打楽器パートだけでクレッシェンドするところは聴きどころでしょう。楽譜には「ゆっくり切れ目なく最大音量に向かって」と指示されていて、演奏していてもゾクゾクします。でもマーラーの作品では、目立つところ以外に、一見何でもないような箇所でも打楽器が鳴っていることが多いんです。打楽器の定番はティンパニ、大太鼓、シンバルですが、マーラーは他にトライアングルとタムタムをすべての交響曲(第10番を除く)で使っています。この2つの楽器に注目すると、マーラーの打楽器へのこだわりが見えてくるかもしれません。また、マーラーの交響曲のうち半分ほどの作品で、ティンパニ奏者が2人必要です。特に「復活」は1番奏者をしのぐほど2番奏者に重要な役割が与えられています。

フェスタサマーミューザKAWASAKI2015東京交響楽団オープニングコンサートでのマーラー交響曲第1番「巨人」の演奏写真(撮影:青柳聡)。この曲もティンパニ奏者は2名で演奏します。

フェスタサマーミューザKAWASAKI2015オープニングコンサートでのマーラー交響曲第1番「巨人」の演奏写真(撮影:青柳聡)。ティンパニ奏者が2名、他にも多くの打楽器が使われています。


 「復活」で私が一番好きなところは第4楽章。アルトが歌い始めた瞬間から涙が出てしまうくらい大好きです。グロッケンシュピール以外の打楽器は休みの楽章なので、舞台上で音楽をじっくり味わっています。
 8月に「復活」を指揮する桂冠指揮者の秋山和慶さんは、東響と「復活」を演奏するのは意外にも初めてだそうです。私も東響でマーラーを演奏したのは去年の「千人の交響曲」だけで、今回「復活」を東響で、そしてミューザで演奏するのは初めてですので、とても楽しみにしています!(SPIRAL Vol.45より転載/取材:榊原律子)

フェスタサマーミューザKAWASAKI2015 東京交響楽団フィナーレコンサート
2015. 8.9 (日) 15:00開演( 14:00 開場)

指揮:秋山和慶
ソプラノ:天羽明恵
メゾ・ソプラノ:竹本節子
合唱:東響コーラス

マーラー:交響曲第2番「復活」

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