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ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 「新世界より」

「新世界より」といえば浮かぶあの旋律!
演奏する側は意外と苦労しています

イングリッシュホルン奏者 篠崎 隆

65篠崎隆

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は演奏する機会がとても多い曲です。第2楽章のイングリッシュホルンのメロディはとても有名で、「遠き山に日は落ちて」「家路」の歌としても親しまれています。僕にとっても小学校の下校の合図の音楽でした。「新世界より」を聴いたことのない人でもきっとこのメロディはどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。演奏していても、お客様が「あ、この旋律、知ってる!」と身を乗り出して聴いてくださっているのがわかるんですよ。普通は静かな楽章だとお客様は寝てしまう方が多いのですが(笑)、この交響曲は逆ですね。眠気が覚める楽章です。
有名すぎる旋律ゆえに苦労も多くて、「今回はどう吹こうかなあ」と演奏会前に必ず悩みます。指揮者もこちらに委ねてくれるので、毎回新鮮な気持ちで演奏しています。
聴いていると気持ちいい旋律ですけれど、演奏するのはけっこう大変なんですよ。というのは、イングリッシュホルンが演奏するのは第2楽章だけ。第1楽章はまったく吹いていないのですが、ほかの楽器と同じように気持ちを高めて、第2楽章のメロディを吹き始めなければなりません。いきなりあの場所で、どこからともなく流れてくるように吹かなければならないのは、何回やっても難しいです。
少し専門的なことをいうと、第2楽章のイングリッシュホルンの旋律は、前の楽章とは関連のない調で始まります。第1楽章がホ短調で終わって、第2楽章で金管楽器のコラールが始まり、コラールの最後で変ニ長調になるので雰囲気が突然変わるんです。とても美しくて、お客様もハッとする箇所だと思いますが、そこでさらにイングリッシュホルンを美しく吹き始めるために非常に神経を集中させます。楽器の性質上、出だしの実音「ファ」の音は不安定な音でもあるんですよ。
「新世界より」はいい旋律が多いですよね。イングリッシュホルンは第3、4楽章も休みなので僕は吹いていませんが、第4楽章にも第2楽章のメロディがちらっと出てきます。演奏会では、その旋律がどこに出てくるか気にしながら聴いてみてください。(SPIRAL vol.8 より転載/取材:榊原律子)

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集 第104回
2015. 1.12 (月) 14:00開演
【出演】
指揮:秋山和慶
ピアノ:中村紘子
【曲目】
J.シュトラウスII:ワルツ「春の声」
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
公演詳細⇒http://www.kawasaki-sym-hall.jp/calendar/detail.php?id=1330

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