名曲全集2025-2026シーズン【ミューザ&東響】
2025.01.19
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ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集 2025-2026シーズン
充実の指揮者&出演者でお贈りする2025-2026シーズン10公演の聴きどころをご紹介!
文:長谷川京介(音楽評論家)
ノット&東響の総決算 有終の美を飾るマーラー
新シーズンは2026年3月で音楽監督を退任するジョナサン・ノットの最後のシーズンでもある。幕開け4月のブルックナーの交響曲第8番は9年前にも東響の定期で取り上げたが、今回はその際のノヴァーク版第2稿ではなく、初稿版を採用する。ノットは『より長く変化に富む。同じ山に遠回りして登るようなもの』と語る。11月の武満徹「セレモニアル」とマーラー交響曲第9番は音楽監督就任記念公演と同じプログラム。ノットは『始まりと終わりが繋がり、一つのループとなって、永遠に続く旅のようだ』と言う。10年に及ぶノット東響の総決算となる2つのコンサートは聴き逃せない。
「我が祖国」「ロメジュリ」「アルルの女」 ドラマティックな初夏
5月のスメタナ「わが祖国」は下野竜也が何度も指揮してきた思い入れの深い作品。「壮大な名演」と絶賛された下野の手腕に期待したい。
6月はローマ歌劇場音楽監督として圧倒的評価を得るとともに、コンサートでは作曲家の息づかいが聴こえるような指揮で大評判のミケーレ・マリオッティが登場。チャイコフスキーとプロコフィエフの2つの「ロメオとジュリエット」でドラマティックな演奏を聴かせる。エリザベート王妃国際コンクール第2位ティモシー・チューイの情熱的なチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も魅力。
7月はユベール・スダーンが得意のベルリオーズ、ラヴェル、ビゼーで色彩感に溢れる演奏を披露する。チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で日本人として初めて優勝した上原彩子のラヴェルのピアノ協奏曲にも心が惹かれる。
ドボコン、「新世界」「田園」「春の祭典」 名曲を新たな切り口で楽しむ秋
上野通明が2021年ジュネーブ国際コンクールチェロ部門で優勝した際ヨーヨー・マが「これで引退できる」と話したエピソードは有名。9月は上野のドヴォルザークのチェロ協奏曲と沼尻竜典指揮の交響曲第9番「新世界より」という名曲プログラム。
10月はアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務め、ヘルシンキ・フィルの首席指揮者でベルリン・フィルとの共演も多いスザンナ・マルッキが時代を革新した2曲、ベートーヴェン「田園」とストラヴィンスキー「春の祭典」を振る。音楽界大注目のコンサートになるだろう。
王道を味わう年末年始
2024年、指揮者生活60年のメモリアルイヤーを迎えた桂冠指揮者・秋山和慶のベートーヴェン「第九」(12月)は王道中の王道。東響コーラスと日本を代表する名歌手達との共演も盤石。
年が明けた1月はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」と交響曲第7番という重量級プログラム。完璧な技巧と豊かな音楽性を兼ね備えたピアニスト清水和音と骨太でたくましい大植英次のベートーヴェンに期待したい。
2月は川瀬賢太郎と牛田智大というフレッシュな2人の共演。端正で透明感のある牛田のモーツァルトピアノ協奏曲第26番「戴冠式」と川瀬の明るく生命力に満ちたメンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」は幸福な時間をもたらすだろう。
(ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「スパイラル」vol.84より(一部修正))