【年末特集②】ホールアドバイザー勢ぞろい!スペシャルイヤーの大晦日
2024.10.20
ホールアドバイザー勢ぞろい!スペシャルイヤーの大晦日
文:飯尾洋一(音楽ライター)
ジルベスターとはドイツ語で大晦日のこと。今年も大晦日に「MUZAジルベスターコンサート2024」が開催される。一年のしめくくりをコンサートホールで過ごす。これは音楽ファンにとって最高のぜいたくだろう。
例年、趣向を凝らしたプログラムが用意される「MUZAジルベスターコンサート」だが、今年はホール開館20周年とあって、特別なプログラムが用意されている。なんと、ホールアドバイザー4名が全員集まるのだ。しかも、その4人の共演が実現する。指揮の秋山和慶、オルガンの松居直美、ピアノの小川典子と宮本貴奈。さて、この4人全員が共演できるクラシックの名曲といえば?
パッと答えが思いついた人はすごい!正解はサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」だ。この曲、指揮者とオルガンが必要なのはもちろんのこと、オーケストラの編成にはピアノの連弾が含まれている。「オルガン付き」と言いながら、実は「ピアノ付き」でもあるという鍵盤楽器成分の高い名曲なのだ。まるでミューザのホールアドバイザー陣のために書かれた曲のようではないか。
そして、今回のプログラムはパリ・オリンピックの年にふさわしく、フランス音楽特集でもある。フランスの作曲家でありジャズ・ピアニストでもあったミシェル・ルグランの映画音楽メドレーが、宮本貴奈の編曲とピアノにより演奏される。また、小川典子はラヴェルのピアノ協奏曲で独奏を務める。フランスを代表する交響曲がサン=サーンスの「オルガン付き」なら、フランスを代表するピアノ協奏曲はラヴェルのこの大傑作だ。軽妙さ、色彩感、清冽なリリシズムはラヴェルならでは。オーケストラは秋山和慶指揮東京交響楽団。長年にわたる信頼関係で結ばれたマエストロとオーケストラが、精妙なサウンドを作り上げてくれることだろう。
さらに今回は川崎市出身の注目の若手ギタリスト、斎藤優貴が招かれ、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」を披露する。斎藤優貴は2021年にイタリアのミケーレ・ピッタルーガ国際ギターコンクールで最高位を獲得するなど、数々の受賞歴を誇る新星だ。「アランフェス協奏曲」は20世紀におけるもっとも成功したギター協奏曲。哀愁を帯びた第2楽章のメロディはあまりに有名だ。ロドリーゴがこの曲を書いたのは1939年、パリにて。スペイン内戦を逃れてパリに住んだ作曲者が、祖国の古都アランフェスに思いを馳せて作曲した。
かつてない華やかなジルベスターコンサートを満喫したい。
(ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「スパイラル」vol.82 より)