【年末特集①】4人のオルガニストとめぐるクリスマスの旅
2024.10.16
ソロから8手8足まで!オルガニスト4人で奏でるクリスマス
文:飯尾洋一(音楽ライター)
クリスマス・シーズンに聴きたい楽器といえばオルガンだ。12月21日、今年も「MUZAパイプオルガン クリスマス・コンサート2024」が開催される。今回は「4人のオルガニストとめぐるクリスマスの旅」と銘打たれ、木村理佐、清水奏花、田宮亮、原田真侑の4名のオルガン奏者が集う。一度に4人ものオルガン奏者が出演する公演は貴重。ソロはもちろんのこと、珍しい「8手8足」による演奏も披露され、一段とゴージャスなパイプオルガンの響きを楽しめる。
アーティスト写真 ©T.Tairadate
4名のオルガニストは、ホールアドバイザーであるオルガニストの松居直美とホールオルガニストの大木麻理が選んだ気鋭の奏者たち。学生時代から親交があり、お互いに共演歴もあることから、今回の企画が実現した。4人はいずれも東京藝術大学音楽学部オルガン専攻卒業、同大学院修士課程修了。木村理佐と田宮亮はドイツのリューベック国立音楽大学、清水奏花は同じくリューベック国立音楽大学とフランスのトゥ-ル-ズ地方音楽院、原田真侑はフランスのサン=モール音楽院に留学し、以後、それぞれに活発な演奏活動をくりひろげている。
プログラムは実に多彩だ。楽しいクリスマスの定番ソングから、本格的な宗教音楽までがとりそろえられており、クリスマス・コンサートに求めるすべての要素がそろっていると言ってもいい。初めてオルガンを聴く人から、オルガン愛好家まで、幅広い人たちが楽しめる選曲になっている。
おなじみの名曲がオリジナルアレンジで演奏される坂本日菜作編曲の『さあ!贈り物をあけてみよう!』、チャイコフスキーのバレエ組曲『くるみ割り人形』より「花のワルツ」、ヴィヴァルディの『四季』より「冬」の第1楽章、アダン(坂本日菜編)の「さやかに星はきらめき」では、「8手8足」による華やかな演奏が聴きもの。クリスマス気分をぐっと盛り上げてくれる。
また、伝統的なオルガン曲からは、バッハの「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」BWV659、カノン風変奏曲「高き天よりわれは来たれり」BWV769や、ヴェックマンの「イエス・キリストよ、讃美を受けたまえ」といった聴きごたえのある作品が選ばれている。20世紀フランスを代表する作曲家、メシアンの「主の降誕」より「神はわれらのうちに」は圧倒的な輝かしさと力強さにあふれている。
オルガンの魅力を全方位から体感できる公演になりそうだ。
(ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「スパイラル」vol.82より)