開幕直前!注目の4公演をピックアップでご紹介!【フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024】
2024.07.07
フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024 の開幕までまもなく!
すべてのコンサートがスペシャルな17日間。なかでも“今年ならでは”のコンサートに注目!
絶対に聞き逃したくない4公演をご紹介しましょう。
文◎柴田克彦(音楽評論家)
8月3日(土)13:30開演
「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル ワールドドリーム・ウインドオーケストラ」
浜松からの黒船!?国内外のトッププレイヤー、吹奏楽で夢の共演!
2019年に始まった首都圏外の楽団の出演は、サマーミューザの良き特徴のひとつ。しかも本公演には、9年ぶりの吹奏楽企画という清新な魅力が加わっている。
同楽団は、「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」の30回を記念して結成されたスペシャルバンド。現代最高位のクラリネット奏者マイケル・コリンズ、世界的サクソフォン奏者・須川展也、パリ管のソロチューバ奏者ステファン・ラベリ等の講師陣をはじめとする国内外のトップ・プレイヤーが揃った超豪華な楽団だ。
自身も吹奏楽経験者である原田慶太楼の活気に満ちた指揮で、豪華メンバーのサウンドを堪能できるのが、まずは今回のチャーム・ポイント。演目も、邦人人気作曲家の名作や「エルザの大聖堂への行列」といった吹奏楽の代表曲、原田が得意とするアメリカのティケリ、マッキーのスタイリッシュな佳品など、理屈抜きに楽しめる作品が並んでいる。
吹奏楽は、オーケストラ以上に華麗で迫力のあるサウンド、変幻自在のリズム、誰もが身近に感じる親密さが大きな魅力。しかもそれを響きの良いミューザで体験できる今回は、普段オーケストラしか聴かないファンも、胸踊る新世界を見出す好機となる。
8月3日(土)19:00開演
真夏のバッハⅨ
バッハの聖地から若き天才が降臨
オーケストラ以外の公演があるのもサマーミューザの魅力のひとつ。ミューザが誇る日本最大級のパイプオルガンを満喫できるこの「真夏のバッハ」は、毎年大好評の名物企画だ。
今回は、J.S.バッハがカントル(音楽監督)を務めたライプツィヒの聖トーマス教会の現在のオルガニスト、ヨハネス・ラングが登場する。1989年ドイツ生まれの彼は、数々のコンクールで優勝・入賞後、各地の教会や大学で活躍し、CDもリリース。2022年1月、32歳という若さで聖トーマス教会のオルガニストに就任した。初来日の今回は、この「明日の大家」を先取りする絶好の機会となる。
プログラムは、J.S.バッハの作品と、その影響を反映したレーガーやシューマン等の作品が交替する興味深い構成。これは音楽ファンの知的好奇心をも満たす内容と言っていい。
ミューザの音響空間で、“楽器の王様”といわれるパイプオルガンの、オーケストラをも凌ぐ壮麗な迫力を体感すること自体が得難い経験。しかも今回は、バッハゆかりの聖地でその伝統を直接受け継ぐ音楽家の演奏を味わえる、極めて貴重な機会だ。オーケストラ・ファンもぜひ生のオルガン演奏の醍醐味に触れてみたい。
8月5日(月)19:00開演
兵庫芸術文化センター管弦楽団
兵庫からの黒船!?佐渡裕×PACオーケストラ
首都圏外の楽団の公演はサマーミューザの新名物。普段聴く機会のない団体の演奏に接する楽しみがもたらされると同時に、首都圏各楽団に伍しての渾身のステージが唯一無二の感銘を与えてくれる。
今回初登場の兵庫芸術文化センター管は、世界中から若手音楽家を発掘し育成するアカデミーの要素を持ち、100名超の卒団メンバーが国内外の楽団で活躍している。在籍期間が限られた俊英奏者が主体の同楽団は、毎回が真剣勝負。著名楽団に入り得る実力者を含めた高水準の技術で、覇気に満ちた音楽を展開し、3日間の定期公演が完売になるほどの人気を博している。
今回は、生誕150年を迎えたシェーンベルクの大作「ペレアスとメリザンド」という難曲をメインにしたプログラムに、出演の意気込みが表れている。また、難関ミュンヘン国際コンクールを20歳で制した天才トランペット奏者セリーナ・オットの出演も大きな見どころ。同ジャンル屈指の人気作であるアルチュニアンの協奏曲等の演目も彼女の魅力を知るに相応しい。
兵庫での定期3公演を経た完成度の高い状態での来場も重要なポイント。人気指揮者・佐渡裕ならではの雄弁でエキサイティングな音楽を、心置きなく味わえる。
8月8日(木)15:00開演
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
團伊玖磨&プッチーニ 100周年オペラ・ガラ
2024年はアニバーサリー作曲家が大豊作。サマーミューザでも、生誕200年のブルックナーや生誕150年のシェーンベルク、ホルスト等の作品が披露される。中でも神奈川フィルの公演は、生誕100年の團伊玖磨と没後100年のプッチーニの作品が並ぶ全編アニバーサリー。しかも「100周年オペラ・ガラ」という魅惑の内容だ。本場譲りのオペラの達人・園田隆一郎の指揮、木下美穂子(ソプラノ)、笛田博昭(テノール)の両スター歌手の出演も実に心強い。
團伊玖磨作品は、日本の看板オペラ「夕鶴」の名場面に加えて、彼の明快な特長を示す「新・祝典行進曲」、「管弦楽組曲『シルクロード』」の生演奏が嬉しい限り。これらをまとめて味わえるのは、アニバーサリーゆえの楽しみだ。
プッチーニの方は、歌劇「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」「トゥーランドット」からの抜粋という極め付きの内容。各作には、「冷たい手を」「歌に生き、愛に生き」「ある晴れた日に」「誰も寝てはならぬ」等々、超有名アリアが目白押しだけに、抒情味溢れる名旋律を終始満喫できる。
本公演は、今年のサマーミューザで唯一のオペラ・ガラ。オーケストラと歌の双方を堪能する希少なチャンスだ。
(友の会会報誌『スパイラル Vol.81』から転載)