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【インタビュー】松居直美企画「ブルクミュラー没後150年 ~ピアノ少年、少女に捧ぐ~」

ホールアドバイザーがこだわりのプログラムをお贈りする「ホールアドバイザー企画」。松居直美さんによる今年度のコンサートでは、2024年が没後150年となる作曲家フリードリヒ・ブルクミュラーをクローズアップします。

日本でピアノのお稽古がブームになった昭和世代から、令和の今の子どもたちまで、長く弾き続けられている『ブルクミュラー 25の練習曲』。ピアノ曲集であるこの作品を、ホールアドバイザー松居直美さん、ホールオルガニスト大木麻理さんが、ミューザ川崎シンフォニーホールの大オルガンと、小型のポジティフオルガンを使って演奏します。松居さんに、このコンサートの意図や聴きどころをうかがいました。

インタビュアー◎飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)

松居直美さんご自宅にてインタビューの様子
松居直美さんのご自宅にて

——10月26日に開催されるコンサートは、ブルクミュラーの25の練習曲全曲を、オルガンで演奏なさいます。この企画はどんな思いから生まれたのでしょうか。

オルガンの演奏や作品にあまり馴染みのない方たち、とくにお子さんやお母さんたちにも、オルガンを楽しく聴いてもらうためのきっかけを作りたいと考えました。そこで、何か親しみを感じていただける曲はないかなと、大木さんと相談をしていたところ、「ブルクミュラー」の名前が上がりました。彼の「25の練習曲」は、ピアノを習う多くの子どもたちが演奏する曲集です。自分で弾いたことがある曲だったり、お母さん世代にとっても馴染みのある曲集なら聴きやすいですし、ピアノとの違いからオルガンならではの響きを感じていただきやすいのではないかと考えました。

——松居さんも、子どもの頃にピアノで「25の練習曲」は弾きましたか?

もちろん弾きましたよ。当時のピアノのレッスンは、割と厳しいものでした。私は練習がめちゃくちゃキラいだったので、よく先生に叱られました(笑)。あるときカレンダーを渡されて、練習した日にはマルをつけなさい、と言われたのを覚えています。そんな私でも、ブルクミュラーはとても楽しく弾いた記憶があります。ハノンやチェルニーの練習曲とは違い、一曲ずつタイトルが付いていて、世界観がすごくあったのが良かったのだと思います。「せきれい」という鳥の名前のついた曲がありますが、当時は何のことかさっぱりわからなかったけれど、自分なりにイメージして弾くのが楽しかったですね。

——このコンサートでは、ミューザ川崎シンフォニーホールの大オルガンと、小型のポジティフオルガンを用いて、大木さんとお二人で演奏されるということですね。

「25の練習曲」を2台ピアノのためにハンス・フランクという人がアレンジされたバージョンを演奏します。一人は原曲のまま弾き、もう一人は別のメロディーや伴奏を付け足します。これを、あえて大きなオルガンと小さなオルガンで合奏することにより、立体的に響かせることができます。オルガンは音色をさまざまに変えることができますから、私たちがどんな音色を選んで演奏するかも注目してほしいですね。とくに「アヴェ・マリア」のような曲は、オルガンとの相性はピッタリです。「貴婦人の乗馬」は、みんなの大好きな曲です。

二人で連弾もしますよ。大オルガンには4段の手鍵盤がありますから、2段ずつに分けて二人で弾くことができます。また、足鍵盤はおもにバス(最低音)を担当しますが、ストップ(音色を変えるために、風を送り込むパイプを切り替える装置)によって、ソプラノ(高音域)を弾くこともできます。場合によっては足がメロディーを担当するかもしれません。

大木麻理さんアーティスト写真
共演はホールオルガニスト大木麻理さん (c)Takashi Fujimoto

——今回はブルクミュラーだけなく、やはりピアノ曲集として人気のあるシューマンの「子どもの情景」全曲、さらにメンデルスゾーンの「無言歌」からも3曲されるとのことですね。

はい、ブルクミュラーと同じ時代に作られたオルガン作品を弾くことも考えましたが、オルガン専用に書かれた曲と並べてしまうと、ブルクミュラーが浮いてしまう気がしました。そこで、やはり同時代のピアノ曲でタイトルのついた作品として、シューマンとメンデルスゾーンを選びました。ただ、それらは素敵な連弾にアレンジされた楽譜がなかったので、作曲家の松岡あさひさんに新しいアレンジを書き下ろしていただきます。松岡さんもオルガンを演奏する方なので、ストップのことなどもよくご存知。きっと素敵なアレンジに仕上がると思います。

もともとピアノ曲をオルガンで弾くには、やはり工夫は必要です。豊かな強弱や素早いパッセージなどは、ピアノと同じようにはいきません。しかし、フレージングや微妙なタイミングをはかることで、オルガンだからこそできる表現を目指すことができます。また、音数が少ない作品ですから、オルガンの音色の変化も繊細に感じ取っていただけるのではないかと思います。

——このコンサートでは、詩の朗読も音楽と音楽の間に加えるそうですね。

ブルクミュラーは1806年にドイツで生まれ、パリで活躍した人です。パリでは当時、サロンに人々が集い、ピアノの演奏や詩の朗読を楽しんでいました。可愛らしいタイトルのある曲を、詩と並べていくことで、19世紀的な世界観が味わえるかなと考えました。上田敏、谷川俊太郎、そして「宝島」の作者であるロバート・ルイス・スティーヴンソンの素敵な詩を挟みたいと考えています。スティーヴンソンの本は絵も可愛らしいんですよ。子どもを主体として、自然との触れ合いを描いています。川崎市は緑化に勤めていますから、自然の美しさや大切さも、コンサートでお伝えできるといいなと思います。照明の演出も加えるかもしれません。

小沼純一さんアーティスト写真
朗読は音楽評論家で詩人でもある、小沼純一さん

——とても楽しみなコンサートになりそうですね。

オルガンの響きをお楽しみいただきながら、ブルクミュラー、シューマン、メンデルスゾーンの作品が持つ新しい魅力に出会っていただけたらと思います。

ホールアドバイザー松居直美企画
言葉は音楽、音楽は言葉Vol.6
ブルクミュラー没後150年 ~ピアノ少年、少女に捧ぐ~



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