創発×モーマチ第56回「音楽を聴いて言葉で伝える!〜目指せ!ユース・レポーター〜」・ワークショップを開催しました!
2024.04.03
3月20日(水・祝)、モーツァルト・マチネ第56回同日、クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんによるワークショップが開催されました!
中高生のみなさんへ、お互いが影響し合い高め合うプログラムを・・!という思いでスタートした、『創発プログラム』。今年度最後になる第4回は、ミューザの日 ウェルカムコンサートでも「ありさ先生」としてお馴染みの、飯田有抄先生によるコンサート・レポートのワークショップです。
まずは今回飯田さんにも大絶賛をいただいた、参加者によるコンサート・レポートを紹介します。
“モーツァルト・マチネ第56回目の公演となる今回は、東京交響楽団がモーツァルトの楽曲を3曲披露した。
一曲目は、交響曲第34番。推進力のある曲想は、冬から春へ移り変わる今の季節にぴったりだ。息のあったオーケストラのアンサンブルはまるで1つの楽器のようだった。
二曲目は、『ヴァイオリンとオーケストラのためのアダージォ』。ヴァイオリンのソロは、ときに夢見心地で、ときに苦しみを嘆いているようで、様々な表情をみせた。それに優しく相槌を打つようなオーケストラも美しかった。
三曲目は、交響曲第29番。特に惹かれたのは、中盤の「アンダンテ」のホルンとオーボエだ。温かみのある音色が高貴で朗らかな曲想とよく合っていた。
終盤は祝祭的な雰囲気が高まり、華やかなクライマックスで幕を閉じた。(高校2年生/受講生)”
“「楽しみだね〜」そういって、解説書に顔を寄せ合う親子。広いホールをじっと見つめている、ご年配のご夫婦。開演前の舞台の空気感を味わっていると、今日のコンサートをどれだけの人たちが楽しみにしていたかが伝わってきました。
開演し、しんと静まり返った会場の中で鳴り響いたオーケストラの音色は、余韻をとても大切にしているように聞こえました。この広いホールに響き渡る一つ一つの音を、そしてその音と音のつながりを、とても大事にしているようにも聞こえました。そして、そんなオーケストラの音色を作り出していたのは、今回の指揮者である、鈴木秀美さん。鈴木さんは、体で音楽を奏でているようでした。鈴木さんの振りが強く、大きくなればオーケストラの強弱も強くなり、動作が滑らかになれば、音も滑らかになる。鈴木さんが音を操っているようにも、オーケストラと一体となっているようにもかんじました。今回の演奏会では、一曲目に交響曲第34番。二曲目にヴァイオリンとオーケストラのためのアダージォ、三曲目に交響曲第29番が演奏されました。
二曲目の「ヴァイオリンとオーケストラのためのアダージォ」でソロを奏でていたニキティンさんの音色は、聞いていて、とても心地がよかったです。オーケストラの温かく、広々とした音色の中でひときわ輝く一番星のように、ニキティンさんの音が私の耳に飛んできました。思わず体が動いてしまう、まるで、誘うような抑揚の付け方に、心が動きました。そして、今回演奏された、交響曲の34番と29番は、モーツァルトがどちらもザルツブルクで作曲したものです。私には、34番は、可愛らしい天使の音色、29番は美しい女神の音色のように感じられました。34番では、すべての旋律に大きな羽が生えて、今にも飛んでいきそうな響きを味わえました。特に第二楽章は、3つの楽章の中でも、もっとも軽やかで、天使が舞い踊っているように聞こえてきました。すごく純粋で澄み切った音色と軽快なリズムが、可愛らしい印象を与えたのだと思います。29番は、とても優しくて、寛大な心持ちで聞くことができました。天から、女神様がそっと見守ってくれているように感じられ、なごやかな気持ちにもなりました。
交響曲が2曲とアダージォ。曲を重ねるたびに、会場が一つになって、どんどん曲の中に吸い込まれていきました。モーツァルトの時代の世界観も、見えたような気がしました。この演奏会を通して、改めて、音楽は時代の壁を超え、人と人とをつなぐ架け橋、そんな存在なのではないかなと感じました。(中学2年生/受講生)”
中高生のユース・レポーターが描いたコンサート・レポート、いかがでしょうか?ではこのレポートがいかにして生まれたか、今回のワークショップの様子をご紹介します。
コンサート開演前、参加者のみなさんに企画展示室に集合していただきました。
簡単な自己紹介の後、早速ありさ先生から、コンサートレポートにおけるポイントを伺いました。
具体的にどんな人がこのコンサートレポートを読むのか想像し、その人に対する思いやりを持って文章を書くこと、その人に伝えるためにはどのくらいくだけた文体にすると届きやすいのかを考えること、ありさ先生がレポートを書くときは、このコンサートを聴き逃したこと悔しく思うような文章にしようと思って書いていることなど、たくさんの大切なことをお話ししてもらいました。
その後参加者のみなさんからの質問に答えて、一度解散!まずはマチネ・コンサートの鑑賞です。
終演後、それぞれ昼食を食べ再集合します。昼食を食べながら、今聴いたばかりのフレッシュな演奏を早速文章化してみようとする参加者の方もいらっしゃいました。
いよいよレポート作成スタート!まずは書いてみよう!ということで、早速執筆タイムです。それぞれ自分のデバイスで文章を実際に書いていきます。参加者の方はとても高い集中力で書く作業にのめり込んでいました・・!
今日のコンサートのカメラマンを担当された平舘さんから撮りたての写真を共有していただき、古楽器の使用があったのでその楽器群はアップで写真を撮っていることなど、写真についてのコメントもしていただきました。参加者はレポートにつける写真を選びながら、自分のレポートのイメージを固めていきます。
途中でありさ先生からのコメントも入りつつ、いざ入稿!ミューザのブログ記事に仮掲載し、みんなで文章を見ながら、ありさ先生にコメントをいただきました!
ありさ先生は、文章のスタイルが全く違う二人の文章について、それぞれ物語風、新聞記事・メディア風になっていて面白い!とコメント。それぞれの文章について良いところ、直すとさらに良くなるポイントなどをお話ししてくださいました。
- 専門用語ではないのに、優しい言葉でわかりやすく伝えられている。
- 奇をてらわない純粋な自分の言葉で書けている。自分の等身大の感想、言葉で書いていないと、それは読み手に伝わってしまうもの。今の自分の言葉で書くことはとても大切!
- どんなにぎこちなくても、この人の心の言葉だなと伝わる文章であることが大切。
- 曲目にかっこをつけるかどうか。例えば同じ楽曲であれば同じかっこで揃えるなどして見やすくする。
- 専門的なことが書いてあっても、それを後で解説して補うなどバランスがよく取れている!
参加者からも、書いてみての感想と質問がありました。
- 文章の終わらせ方、落とし込み方の部分でとても悩んだ。他にも文章の終わりの部分のまとめ方はあるか?
→他のまとめ方を探してみるというのはとても良いことだと思う。新しい視点の見つけ方としては、コンサートを聴くときに、すごくびっくりする心の準備をしておくこと。一本のコンサートの中で自分のびっくりのポイントは何であったかを考えながらレポートを書き、それを結論に持っていくと良いと思う。もし自分の中でポイントが絞れなくても、あえて書く人に投げかけて終わる、まとめずに終わるというやり方もある。一番良くないのは最初から落としどころを決めてしまうこと、予定調和にしてしまうこと。
- 固い文章になってしまった。どうやったらもっと柔らかくできる?
→今回はスマートフォンで打ち込んでいたようだが、もしも普段が紙とペンでの作業が多いということならば、そのことだけでも、思考回路が変わってしまっていると思う。今回は時間も限られていた。もう少しリラックスできる環境ならもっと自然に柔らかい文章になると思うので、思う存分羽を広げた時、柔らかい文章が書けるか探究してみること。次のコンサートはペンと紙でぜひ書いてみて。
立ち会っているスタッフにとっても目から鱗のコメントが続き、文章化する醍醐味と面白さを再確認するワークショップとなりました。
最後にありさ先生からは、「これからの時代、職業をいくつ持っても良い時代になる。いくつかできることを持って、それを掛け合わせることでさらなる高まりを見せる時代。その一つに、音楽を文章にする職業をぜひ!二人には選んでほしい!今後も書き続けることが大切。SNSを活用したり、今回のように誰かに見てもらう機会を積極的に探して、発信し続けてほしい!」と熱いメッセージをいただきました。
次回の創発プログラムは、2024年5月3日(金・祝)11:00開演「モーツァルト・マチネ第57回」終演後の声楽ワークショップです。
詳細はブログ:【3/8~申込開始】創発×モーマチ第57回「いい声で歌おう!ホールで声楽ワークショップ」からご覧ください。