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ミューザ川崎シンフォニーホール
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【インタビュー】“音色の魔術師”ミューザにあらわる! イヴ・レヒシュタイナー(オルガニスト)

2023.07.24

From_Muza

音色の魔術師、イヴ・レヒシュタイナー(オルガニスト)に聞く

“ひとりで演奏するオーケストラ”ともいわれるパイプオルガンを自在に操り、時代やジャンルを超越した音楽を奏でるオルガニスト、イヴ・レヒシュタイナーがこの秋ミューザにやってきます。

2021年2月、ホールアドバイザー松居直美企画「言葉は音楽、音楽は言葉Ⅲ オルガンと朗読で聴く『幻想交響曲』で、パイプオルガンによる「幻想交響曲」の全曲演奏が大きな話題となりましたが、あのオルガン編曲版を手掛けたのもレヒシュタイナーだったのです。

「幻想交響曲」第1楽章も演奏する、今回のリサイタルについてうかがいました。

(インタビュー・構成 林田直樹)

 ベルリオーズ「幻想交響曲」全楽章をオルガンに編曲した、あのレヒシュタイナーといえば、ピンとくる方もおられるかもしれない。その彼がついにミューザ川崎シンフォニーホールにやってきて、バッハからプログレッシヴ・ロックに至るまでの多彩なプログラムでリサイタルをおこなう。音色と編曲の魔術師レヒシュタイナーとはいったいどんな人物なのか? オンラインでお話をうかがってみた。

イヴ・レヒシュタイナーの写真

*  *  *  *  *  *  *

――多彩でユニークなレパートリーをお持ちです。オルガンとは一見結びつかなそうなベートーヴェンやショパンも弾いておられますし、特にオルガンとパーカッションを組み合わせたハイドンとモーツァルトは素晴らしかったです。YouTubeでは、二人の美女を助手に従えてピンク・フロイドやキング・クリムゾン、フランク・ザッパまで…。

レヒシュタイナー(以下R):最初はクラシック音楽の正統派の音楽教育で進んできました。兄がロックを聴いていましたが、その頃はあまり興味はなかったのです。20代から30代にかけては、オルガンに限らずバロック音楽に重きを置いていました。40代から50代に向かっていくにつれて、個人的に編曲したものを次々と。バッハにはじまりモーツァルト、さらにはベルリオーズの交響曲、そしてロックへ広がってきたのです。

私が編曲をするようになった大きな理由に、オルガニストとして通奏低音に深く関わるようになったことが挙げられます。おかげで和声的なスキルが身についたのです。バロックとは作曲のプロセスの始まりというふうに考えています。作曲家の思考回路というものを、バロックに関われば関わるほど持つことができますからね。

――ベルリオーズの幻想交響曲をオルガンに編曲するなんて、誰も想像もしなかったようなことだと思うんです。そこで一体、何を目指したのでしょうか。

R:オルガニストで結構そういう編曲をやる仲間もいるのですが、やはり私は他の人がやらないようなことやろうと思った。かなり複雑ではありますが、とてもバラエティーのある音色も豊かなものができたと思います。

そのようにして、オーケストラ作品も三つのプログラム以上のものを編曲しました。さらに新しい試みとしては、最近ではバッハをテーマに、コンテンポラリー・ダンサーのリセ・ポートンとのコラボレーションなど、いろんな方向にアンテナを伸ばしているところです。

――ミューザでのコンサートは、メンデルスゾーンやジャン・アランの作品も取り上げますね。

R:オルガンのために書かれた作品は膨大ですが、その中でも数少ない偉大な作品のひとつが、メンデルスゾーンのソナタだと思いますね。19世紀を代表する傑作です。バッハの影響を色濃く受けていますが、それ以上のものがある。彼はオルガンというものを熟知していました。同様のことは20世紀のジャン・アランについても言えます。私の心の中で特別な場所に住んでいる作曲家の1人です。

――フランクについてはいかがですか。

R:最晩年の彼の作品は、宗教的なタイトルが付けられていますが、中身は必ずしも宗教的とはいえない。むしろコンサート・ピースです。主題は美しく、和声は複雑で、構成的にもよく組み立てられており、その展開がクライマックスに向かって長く大きなクレッシェンドで盛り上がっていくあたりは実に卓越しています。

――ミューザのプログラムでは、オールドフィールドだけが、1970年代のプログレッシヴ・ロックの名曲ですね。

R:ピンク・フロイドやキング・クリムゾンだけでなく、マイク・オールドフィールドも、フランク・ザッパと同じくらいに現代音楽として語ってよいだけの質の高さがあると思うのです。

彼らは、シンプルで魅力的な5分の歌を作ることができるというだけでなく、20分ぐらいの構造物としての作品を作ることができます。クラシック音楽と全く同じように、複数の主題の展開と再現があり、凝ったリズム、美しいメロディー、巧みなオーケストレーション、その全てが非常に複雑に構成されていますからね。

――それにしても、レヒシュタイナーさんは大胆にロックも演奏しつつも、古楽の教授としてアカデミックな顔もお持ちです。非常に幅が広いですよね。

R:新しい体験をすることが何より好きなんです。常に学びがそこにはありますから。「学びを得る」ことこそが私にとって大事なことなのです。この秋にはコンクールの審査員としても日本に行きますが、そういうときにはいわゆるクラシック音楽の枠組みの中で正統派のジャッジをするということになります。でも、同時に私は常に若い世代に、凝り固まることなく、広い視野を持って、どんどんあらゆる良い音楽を聞いてそこからインスピレーションを得て欲しいとも思うのです。

(ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「スパイラル」vol.77より転載)

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イヴ・レヒシュタイナー パイプオルガン・リサイタル

【日時】

2023年9月18日(月・祝) 14:00開演

【曲目】

  • J. S. バッハ*:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV 1001より アダージョ
  • J. S. バッハ:フーガ ニ短調 BWV 539
  • J. S. バッハ*:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV 1001より シチリアーナ
  • J. S. バッハ*:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV 1004より シャコンヌ
  • メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ第3番 イ長調 Op. 65, No. 3
  • アラン:間奏曲 「紡ぎ女」 AWV 74a
  • アラン:連祷 AWV 100
  • オールドフィールド*:チューブラー・ベルズ(パート1)
  • フランク:オルガンのための3つの小品 – 第3曲 英雄的小品 ロ短調 M. 37
  • ベルリオーズ*:幻想交響曲 Op. 14 I. 夢と情熱、II. 舞踏会

(*オルガン編曲/イヴ・レヒシュタイナー)
公演詳細はこちら

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