「真夏のバッハIV」 ~オルガン・カフェ レポート
8月10日に開催した「真夏のバッハIV ルドルフ・ルッツ パイプオルガン・リサイタル」では、開演前に「オルガン・カフェ」と題したロビーコンサートを行いました。
本編でも演奏するルドルフ・ルッツさんがポジティフ・オルガンをお客様の目の前で演奏しました。ただ演奏するだけではないのがルッツさん流。スタッフも、いったい何を演奏するのか知らされておらず、始まってみないとルッツさんが何をするのか全く分からないという状況でした(笑)。
「オルガン・カフェ」の演奏曲目はこちらでした。
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J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲の主題による即興演奏
オブラディ・オブラダ ~会場の皆さんと一緒に
ブクステフーデ:フーガ ハ長調 BuxWV 174(ゲスト演奏)
リクエスト即興演奏
《悲しみ》イ短調で
《叙情的》ハ長調で
ラグタイム(エンターテイナー)
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オブラディ・オブラダでは会場の皆さんと一緒に歌いながら演奏したり、お客様からどんな雰囲気の曲を聴きたいかとリクエストをもらって演奏した《悲しみ》と《叙情的》はその場で即興演奏。さすが、即興の魔術師。すぐれた演奏家であると同時に、お客様を楽しませる引き出しをたくさん持っていて、音楽を通じてどんどんコミュニケーションを取っていきます。世界的なバッハ演奏の権威にして、この親しみやすいお人柄に、会場もすっかり魅了されました。
そして、前のほうに座っていた野球帽の小学生に目をつけたルッツさん。
ちょっとこちらに来てオルガンを弾いてみるかい?と促すと、その男の子はなんとブクステフーデのフーガを弾き始めたのです!声部が増えた瞬間にどよめく会場。ルッツさんも、驚きながら指を3本立てて「三声(のフーガ)だよ」とお客様に示します。
ルッツさんの心づもりとしては、おそらく子どもに少し鍵盤を弾かせて、そこに伴奏をつけたり即興で作曲したりということを披露したかったのではないかと思います。まさかこんなに本格的な演奏をするとは誰も予想していませんでした。
実はこの小学5年生の男の子は、ミューザの「わたしもぼくもオルガニスト」というオルガンレッスンに小学1年生の時から参加しており、10歳からは前ホールオルガニストの近藤岳さんに師事してオルガンを勉強している伊藤正晃くんでした。松居直美さんらにその実力を認められ、9月に川崎市が開催する「プラチナ音楽祭」でミューザの大オルガンを演奏することも決まっています。
そんな彼がたまたまルッツさんの眼に留まっただけでも奇跡ですが、そこで堂々と1曲弾いた度胸も大したもの! ルッツさんは「このあと僕の出番はないね!」と称賛を贈りました。
そこで終わらないのが、ルッツさん。「オルガン・カフェ」終演後、伊藤くんに「今日は僕の横で聴きなさい」と言ったのだそう。そして本当に、大オルガンの演奏台に椅子が用意され、伊藤くんはルッツさんのすぐ真横で聴くことに! 知らない人が見たら、とても不思議な光景です。ルッツさんは、コンサートの冒頭で会場に事情を説明しました。
終演後、伊藤くんに感想を聞いたところ「とても緊張したけれど、大好きな『パッサカリア』の演奏を間近で見られてよかった。夢中で見てしまった」と語りました。
たった1日で起こった奇跡の出会い。
ミューザでの初リサイタル、そして2015年から3年にわたるジャズピアニスト佐山雅弘さんとのセッションでも常に驚きと音楽の喜びに溢れるコンサートをミューザで行ってきたルッツさん。今回もスペシャルなリサイタルになりました。
コンサートレビューはぜひほぼ日刊サマーミューザ第15号でお読みください。
音楽を通じて、これからまだまだミューザで素敵なケミストリーが起きていくのではないかと予感させる一夜でした♪