【メッセージ】「ローマの松」を中心とした華やかな名曲集を 都響サウンドでお楽しみください―国塩哲紀(東京都交響楽団芸術主幹)
フェスタサマーミューザKAWASAKIは、東京都交響楽団(都響)にとって重要なステージです。1年に1度、世界的に著名なホールで、耳の肥えた聴衆によって、いくつものオーケストラと聴き比べられる。さながらBBCプロムスのよう、と言ったら大げさでしょうか?
しかも、主催者からは「本格的なシンフォニーコンサートを」というリクエストをいただいており、それならばと毎年、定期演奏会同様の指揮者とプログラムを提供させていただいているつもりです。この音楽祭で初めて都響を聴き、気に入ってくださる方が少しずつでも増えてほしいというのが私たちの願いであり、出演する意義と考えています。
2019年は、都響の首席客演指揮者であり、世界的に活躍する指揮者アラン・ギルバートとともに出演できることを大変うれしく思います。
ギルバートにこの音楽祭の素睛らしさと趣旨を説明し、ミューザ川崎シンフォニーホールの写真を見せたところ、目を輝かせ、すぐに「レスピーギ、どう?いいでしょ?」と曲目を並べ始めました。さすがはニューヨーク・フィルの音楽監督も務めた人物。夏のフェスティバルにふさわしく、お客様がオーケストラを聴く醍醐昧を満喫でき、ホールの性能も活かせるプログラムは何か、心得たものです。「ローマの松」を中心とした華やかで重量感もある名曲集を都響サウンドでお楽しみいただければ幸いです。
ギルバートは優れたコミュニケーターです。聴衆に対しても、楽員に対しても。都響とのリハーサルは自ら日本語で行っています。英語でかまわないのに。少しでも深く楽員と心を適わせたいという気持ちからでしょう。また、昨年7月に大和市公演でバーンスタインの「シンフオニック・ダンス」を演奏した際、異例にも楽貝と一緒に舞台に入場しながら、客席に向かって「マンボ!叫んでね」とジェスチャー、一瞬にして聴衆の気分を盛り上げたのは印象的なシーンでした。きっと今日のコンサートでも、指揮しながら、心の中で聴衆のみなさんに「楽しい!」「いい曲でしょ?」と日本語で語りかけていることでしょう。
文=国塩哲紀(東京都交響楽団芸術主幹)