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ノット監督のサンダーバード愛が爆発!音楽の原点がここに

いよいよフェスタサマーミューザ2019まであと2週間を切りました。
7/27(土)の開幕を飾るジョナサン・ノット&東京交響楽団のプログラムは、サンダーバード、リゲティ、ベートーヴェン、というとてもユニークで独特の選曲。そこにはノット監督の熱烈な“サンダーバード愛”と、今に至る音楽の原点がありました。その思いをたっぷりとご覧ください!

(取材・文=久野理恵子)

サンダーバードの音楽に胸躍らせた
4歳のノット少年
音楽の持つ強い力に出会い、指揮者の道へと導かれた


東京交響楽団 音楽監督 ジョナサン・ノット

●7月27日からフェスタサマーミューザが始まります。オープニングコンサートにはユニークなプログラムを用意して下さいましたね。
―――ええ、多くの方にいろいろな形で楽しんでいただけるプログラムです。でもこの3曲は私にとってカタルシス的な存在でもあるのです。

●ザ・ベスト・オブ・サンダーバード(ノット特別版)もそうなのですか?
―――ええ、私がまだ4歳だった時、毎週モノクロテレビの前に座り、サンダーバードを食い入るように見ていました。当時はテレビも今みたいに大きくなかったのですが、登場する秘密基地や様々なメカに魅せられ、想像力をはばたかせていました。
その後、両親がサプライズで映画館に連れて行ってくれました。私はその時、初めてカラー映画を見たのですが、それがサンダーバードだったのです。ロケット発射のカウントダウンと共に響く不協和音、それはまさにサンダーバード、つまり冒険の始まりを意味し、私はその音楽に胸躍らせ、音楽の強い力に圧倒されました。
4、5年後、私の興味の対象はクラシック音楽に移りましたが、この時に知った、音楽の持つ強い力との出会いが私を指揮者の道へと導いたと言っても過言ではないのです。

●サンダーバードが……ですか?
―――そうです。なぜあそこまで多くの子供たちがサンダーバードに夢中になったのか。サンダーバード2号だって、あの形状では飛ぶのは難しいですよね。でも、大きな困難にもひるまず立ち向かい、不可能を可能にするシンプルでポジティブな物語とそれを支えるパワフルな音楽が人々を惹きつけたのだ、と私は思います。その音楽は子供たちの夢を膨らませ、大人には夢を思い出させてくれます。音楽を通して、人は不可能と思われる夢の世界と現実の世界を自由に行き来できるのです。
実は、大きなことに向かって苦しみながらも努力を繰り返す精神は、私の音楽家としての気持ちの持ち方の原点ともなっているのです。

●サンダーバードのスコアとマスターテープは2003年に発見された、と聞きました。作曲家はイギリス人のバリー・グレイですね。
―――そうです、イギリス音楽ですよ(笑)。彼は物語をさらにパワフルなものにしてくれるような多彩な音楽を作曲していて、高い評価を得ています。今回は、フェスタサマーミューザのためにその中から選曲した“ノット・セレクション”をお届けします。
とにかく理屈抜きに、聞いてみてください。大人も子供も、サンダーバードを知らない人も胸躍る思いに浸ることができますから。

●リゲティのピアノ協奏曲にもノットさんの思いがこもっているのですか。
―――これは私がまだ若い時に初めて本格的に取り組んだ現代音楽で、演奏後にリゲティ氏本人と会い、「今後もぜひ私の音楽を指揮していってほしい。」と、光栄な言葉をいただいた思い出深い音楽です。これは私の現代音楽のレパートリーの礎となった作品であり、とてもエキサイティングな協奏曲です。この作品もまた、現代音楽と構えずに楽しんでいただけると思います。もちろん、作品について知れば知るほど、さらに深くこの作品を楽しめることは言うまでもありません。

●そしてベートーヴェンの交響曲第1番ですね。考えてみると、1番をライブで聞く機会って、そうそうないですね。
―――そうなのです。あの第5番や第9を作曲したベートーヴェンの交響曲の第1番です。
その彼が最初に書いた交響曲は、非常にクレバーな、よくできた作品となっています。また、彼の個性がすでに色濃く打ち出されています。

●最初に書いた交響曲から既にベートーヴェンらしい作品なのですね。
―――ベートーヴェンは「作曲者である私!は語る。」「私!はこのように感じたのだ。」と自分の言葉、つまり音楽で自ら語った最初の作曲家です。田園風景を見ても、「私はこのように感じ、見たのだ。」と、表現しました。
古典時代の終わりとロマン派の始まりに位置するベートーヴェンの音楽は、モーツァルトやハイドンの中にも、シュトラウスやプロコフィエフの中にも、何かしら、そのかけらが存在します。つまり前後の時代にも私たちは彼の存在を見出すことができるのです。
それだけに演奏家は皆(私も!)、試行錯誤を繰り返してベートーヴェンと取り組みます。実は、若い時に多くの演奏家がベートーヴェンを前に失敗する姿を見て、自分は失敗したくないと、身構えたことだって、あったのですよ。

●ノットさんはベートーヴェンの音楽を指揮し、多くの成功を収められていますが、それでも苦労なさるのですか。
―――ええ、芸術とは満足したらおしまいです。常に学ぶことで新たな発見がもたらされ、音楽の素晴らしさを多くの人々と分かち合い、伝えることができるのです。
努力を惜しまない東京交響楽団と共に作り上げるベートーヴェン第1番、皆様にも新たな発見をもたらしてくれるかと思います。楽しみにしてください。

*  *  *  *  *  *  *

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2019
東京交響楽団オープニングコンサート

~ノット&東響の挑戦的な開幕宣言!~
[日時]2019年7月27日(土)15:00開演

[会場]ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:タマラ・ステファノヴィッチ

バリー・グレイ:「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」 ~ジョナサン・ノット スペシャル・セレクション(オリジナル・サウンドトラックより)
 ・オープニング・テーマ~エンディング・テーマ
 ・死の谷組曲から 東南アジア道路でのドラマ
 ・ニューヨークの恐怖組曲から エンパイア・ステート・ビルの移動
 ・SOS原子旅客機組曲から フッドとファイアーフラッシュ号
 ・死の谷組曲から 救助に向かうサンダーバード
 ・ゼロX号のテーマ
 ・ニューヨークの恐怖組曲から 独占スクープ失敗
 ・ロケット太陽号の危機
 ・SOS原子旅客機組曲から ペネロープ号の追跡、ファイアーフラッシュ号着陸、フッドとファイアーフラッシュ号
 ・サンダーバード・マーチ
リゲティ:ピアノ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第1番

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