ストラヴィンスキー:春の祭典
2018.09.09
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センセーショナルな初演から早や100年以上がたち、いまやすっかり「名曲」として人気を博すようになった、ストラヴィンスキーの「春の祭典」。中でも曲の冒頭にあるファゴットの独奏は非常に印象的です。というわけで今回の「名曲のツボ」では、東京交響楽団首席ファゴット奏者 福井 蔵さんのお話をご紹介します。
作曲家はなぜかファゴットの高音が好き “音域外”の音も吹いています
東京交響楽団首席ファゴット奏者 福井蔵
「春の祭典」の冒頭のファゴットのソロは高音が出てくることで有名です。ここに登場する「ハイD」は今では普通に出せますが、作曲当時のファゴットにこの音を出せるキーはありませんでした。1913年の初演のときファゴット奏者はさぞかし驚いたと思いますよ。さらにこのソロは、とてもリズムが複雑なんです。5連符に装飾音がついたり、3連符の真ん中の音がさらに3連符になっていて、そこに装飾音がついているとか。このリズムが頭の中で整理されていないと吹けません。
このソロは入団オーディションに必ず出ます。つまり、これが吹けないとオーケストラ・プレーヤーになれないんですが、ひとりで吹く分には比較的簡単なんです。ただ本番で客席が静まりかえり、いよいよ始まるという緊張感の中で演奏するのが難しいんですよ。
高音ということでは、第1部の最後の音は、冒頭のソロよりも1音高い「ハイE」です。ほかの楽器もfffなので聞こえませんが、この音は音域外でなかなか鳴りません。フランス式の「バソン」はドイツ式の「ファゴット」より高音が出しやすいということもあるようですが、ストラヴィンスキーは音域を意識していないですよね。近・現代の作曲家はファゴットの高音が好きなんですよ。ニワトリの首を絞めたような音のどこがいいんだか僕にはわからないですが(苦笑)。低音の伴奏楽器というファゴットのイメージを覆したくて、高音を出すソロ楽器として使いたいようです。
「春の祭典」のファゴットの聴きどころは冒頭だけではありません。この曲はファゴット奏者が5人もいる珍しい作品なんですよ。第1部の「賢人」はファゴットの5重奏で、なんとコントラファゴットに高音のソロがあるんです。CDでは聞こえづらい箇所ですので、演奏会ではぜひ注目してください。
ひとりでも演奏できる音階をわざと分けて掛け合う部分も「春の祭典」にあります。ファゴットは奏者によって音色が違いますので、3人で演奏するところは面白いと思います。
ちなみに、僕が好きな部分は、第2部の「乙女たちの神秘的な集い」です。アルト・フルートのソロがあって、すごくきれいです。
冒頭のソロに話を戻すと、奏者の音色の違いに、個人の解釈が加わるので、かなり個性が出ると思います。指揮者もここは振りません。どんな旋律になるかお楽しみに。
「スパイラル Vol.21」(2009年4月1日号)より転載/取材 榊原律子
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ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第140回
【日時】2018年 9月9日(日)14:00開演
【出演】指揮:飯森範親 ピアノ:高橋優介*
【曲目】《オール・ストラヴィンスキー・プログラム》
組曲「火の鳥」(1945年版)
ペトルーシュカ*(1947年版)
春の祭典