ピアニスト小川典子さんの恒例企画 第16回「ジェイミーのコンサート」LIVEレポート
去る4月19日、ミューザ川崎シンフォニーホールのアドバイザーでもあるピアニスト小川典子さん主宰の「ジェイミーのコンサート」が市民交流室にて開催されました。自閉症者とそのご家族に上質な音楽で心に安らぎを、との思いから2004年にスタート。以来、毎年続いており、もちろん誰でも鑑賞できます。16回目となる今回は川崎市長の福田紀彦氏もお見えになりました。
その福田市長のご挨拶で始まり、川崎市自閉症協会代表理事を務める明石洋子さんの特別講演へ。ご子息の例を交えて誤解されがちな自閉症への理解を促すとともに、4月2日の「世界自閉症啓発デー」に川崎で行われたイベントの模様も紹介されました。
その後、いよいよ演奏の始まりです。キラキラした鮮やかなピンクの衣装に身を包んだ小川さんが最初に弾いたのは、“トルコ行進曲付き”でお馴染みのモーツァルトの「ピアノソナタ第11番」。観客と奏者が同じ目線でというこだわりのもと、フラットなフロアに置かれたピアノからは豊かで透明感のある音が会場いっぱいに広がり、瞬く間に空間の雰囲気を一変させます。
2曲目は世界初演となる「Serenata for Noriko」。ジェイミーのコンサートのために作曲された、いわばテーマソング。現代音楽のエッセンスが程良く利いた親しみやすい小曲は、プログラムの新定番になることでしょう。
曲の合間に英国ギルドホール音楽院で行われた「ジェイミーのコンサート」学術調査研究の学会発表のご報告も。調査は小川さんとミリアム・ジェームス博士が共同で行ったもので、日英両国のご来場者アンケートなどを詳細に分析。企画の独自性や高い満足度といった嬉しい成果が多数明らかになったようです。
最後は1曲目と“行進曲”つながりで“葬送行進曲”が入ったショパンの「ピアノソナタ第2番」。近くのピアノから紡ぎ出される音楽は、大ホールで聞くのとはまた違い、ダイレクトに体と共鳴するかのような大迫力。繊細なフレーズから重厚な響きまで、多彩な音色を自在に操るまさに圧巻の演奏でした。
素晴らしい演奏の後は、皆さまお待ちかねの茶話会。小川さんご自身が英国から持ち込んだビスケットを自ら観客に振舞います。同様に持参された紅茶も配られ会場は一気に和やかムード。そんな中Serenata for Norikoの作曲者ジョセフ・フィブス氏のインタビュー映像も流されました。
国際的な一流ピアニストでありながらも、温かく飾らない小川さんの人柄を感じさてくれる素敵なひととき。リピーターが多いという話も頷けます。毎年この時期にこの場所で開催されるので、来年はあなたも、ぜひご一緒に。