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HOME  / ブログ / 「スパイラル」バックナンバー / シューマン:交響曲第3番「ライン」

シューマン:交響曲第3番「ライン」

「名曲全集」2017-2018シーズン最後の公演はシューマンの名曲をお贈りします。
東京交響楽団クラリネット奏者の近藤千花子さんに聴きどころを教えていただきました!

東京交響楽団 クラリネット奏者
近藤千花子

大聖堂、川のうねり……ライン川の風景が浮かぶ交響曲
5つの物語を味わうファンタジー

シューマンの交響曲第3番「ライン」は、2009年にスダーン氏の指揮で演奏したときの感覚が忘れられません。第2楽章で同じメロディを繰り返しているうちに、それが川のうねりに聞こえ、吸い込まれるような気分になったのです。鳴門の渦潮に飲み込まれるような、はたまた自分の意思に反してライン川に飛び込んでしまいそうな、そんな強烈な印象が残る交響曲です。
この作品は、デュッセルドルフ市の管弦楽団・合唱団で音楽監督の職を得たシューマンが、充実した活動を送っていた時期の作品です。デュッセルドルフに転居したあと、家族でケルンを旅行し、そこで見た大聖堂にインスピレーションを得て作曲したとされています。「ライン」という題はシューマン自身によるものではないものの、川辺の自然や風景が見えるようです。

ライン川とケルン大聖堂

「ライン」はシューマンが最後(4番目)に書いた交響曲。ところが、出版順が3番目なので「第3番」となっています。交響曲第3番というとベートーヴェンの「英雄」が思い浮かびますが、シューマンはそれを意識して「ライン」の調性を同じ変ホ長調にしたそうです。第1楽章が序奏なしで力強く始まるのも「英雄」と同じです。
5つの楽章はそれぞれ全く違う表情を持ち、そのどれもがファンタジーにあふれています。第1楽章冒頭の堂々とした主題は、ケルンの大聖堂を思い起こさせますが、聴いているだけだと実際の譜面とは違う拍に感じるというトリックがあります。第2楽章はうねりだけでなく16分音符の掛け合いも特徴的です。
クラリネットの聴きどころといえば、牧歌的な第3楽章の出だし。クラリネットがリードしてメロディを演奏します。一緒に演奏するのはファゴット、ホルン、ヴィオラですから、響きはとてもあたたかです。その後の第4楽章は荘厳で、第5楽章は喜びに満ちています。

試聴:第3楽章(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)

1冊のファンタジーのよう

最近、読書好きの音楽家に薦められてミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を手に取ったのですが、物語を読んでいる最中に思い浮かんだのがシューマンの音楽でした。クラリネットとピアノのための幻想小曲集を今すぐ演奏したい! 本からそんなことを感じたのは初めてのことでした。このエンデのファンタジーと同じように、「ライン」も5つの物語からなる1冊のファンタジーのようです。
シューマンのオーケストレーションでは、複数の楽器が重なって同じフレーズを演奏する場面が多く現れます。バランスを取るのは難しいものの、それゆえに自分がシューマンの音楽の一員であることを強く感じながら、喜びをもって演奏できます。ピアノを使って作曲してからオーケストラの各楽器に振り分けたのだろうと思いますが、ある種完成されたオーケストレーションだと思います。
ところで、オーケストラの中でクラリネットの席はほぼ中心です。演奏しながら360度を音に包まれる特等席で、特にシューマンのようなオーケストレーションの曲では、それがより強く感じられます。演奏会ではお客様と一緒に、オーケストラ全体の音の形や色を楽しめたらと思っています。
3月の「名曲全集」を指揮するのは下野竜也さん。音の形をとても明確に表現する指揮者で、音楽の表情の変化にも敏感な方ですから、楽章ごとの顔の違いについて私たちにどんなアイデアを提供してくださるか、とても楽しみです。

ミューザ川崎シンフォニーホール友の会会報誌「スパイラル」Vol.55(2018年1月1日号)より転載/取材 榊原律子

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第135回

2018年 3月18日 (日) 14:00開演
指揮:下野竜也
ヴァイオリン:三浦文彰
【曲目】
兼田 敏(中原達彦編):パッサカリア(管弦楽版)
シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 作品97「ライン」

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