本文へ
  • English
ミューザ川崎シンフォニーホール
menu

ブログBlog

HOME  / ブログ / 「スパイラル」名曲のツボ / ヤナーチェク:シンフォニエッタ

ヤナーチェク:シンフォニエッタ

「シンフォニエッタ」が300万部を超えるベストセラーとなった村上春樹の長編小説「1Q84」の冒頭で使われ、その後も作品全体の中でたびたび登場してクラシックファンの間で話題になったのは2009年(もうそんなに経つんですね!)。トランペット12本という編成ゆえになかなか演奏されない曲ですが、今回「名曲全集」で初めて演奏されます。

総勢12人の“トランペット祭り”
バンダにマティアス・ヘフスが登場!

東京交響楽団
首席トランペット奏者 佐藤友紀

ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」はモラヴィアの民族的な響きが魅力的な作品ですが、なんといっても注目は金管楽器のバンダ(別働隊)です。バンダの楽器編成は、トランペット9人、テナー・テューバ2人、バス・トランペット(ユーフォニアム奏者またはトロンボーン奏者が演奏)2人。オーケストラの中のトランペット奏者3人を加えると、総勢12人による“トランペット祭り”が繰り広げられることになります。
バンダのトランペット9人は、1~3番、4~6番、7~9番という3グループに分かれます。ですから、リーダーとなる首席クラスの奏者は1番だけではダメで、4番、7番にも必要。また、主導権を担う1~3番ではなく、他の2グループが高い音を受け持つ部分もありますので、そうしたバランスを考えると、どの奏者に何番を吹いてもらうか大いに悩みます。
全5楽章からなる「シンフォニエッタ」の第1楽章は、バンダとティンパニだけのファンファーレ。ステージ上ではティンパニ奏者しか演奏しないなんて、とても珍しいですよね。テナー・テューバの和音の上で、トランペット9人は全く同じ音でメロディを演奏しますが、ここまでたくさんのトランペットによるユニゾンは他の曲にはなかなかありません。私はこのあとメロディが3声に分かれていく瞬間の響きの広がりが好きです。やがて3グループの掛け合いが始まりますが、リズムが入り組んでいてこれが案外難しい。というのも、横一列に並ぶとお互いにコンタクトを取れないために合わせづらいのです。時には各グループが離れた位置で演奏することもあり、すると時差が生じますから、それを考慮して吹かなければならない。ここにバンダの難しさがあります。

参考演奏:「シンフォニエッタ」 I. Fanfare: Allegretto
ジョナサン・ノット指揮 バンベルク交響楽団
http://ml.naxos.jp/track/538995

オーケストラの中のトランペットが目立つのは、3人の奏者がユニゾンでメロディを吹く第4楽章の冒頭でしょうか。第1楽章のバンダもそうですが、「シンフォニエッタ」はユニゾンが多い曲ですから、全員の音色・音程を揃えなければなりません。しかし、完全に合わせすぎると今度は複数で吹いている感じが失われてしまいますので、いつも絶妙な加減を目指しています。

参考演奏:「シンフォニエッタ」 IV. Allegretto
ジョナサン・ノット指揮 バンベルク交響楽団
http://ml.naxos.jp/track/538998

バンダは、第2楽章から第5楽章の途中まで休みで、第5楽章の最後にようやく再登場。ここでオーケストラと合体して、ついにトランペット奏者12人全員の演奏となります。輝かしい音をお楽しみください。

9月の「名曲全集」では、ソリストのマティアス・ヘフス先生がなんとバンダの1番を演奏します。というのも、この日が日本初演となるケルシェック「ラッパ達が鳴り響く」は「シンフォニエッタ」と同じようなトランペットの編成を要する曲で、この2曲はカップリングするのにぴったりなのです。私もヘフス先生と一緒にバンダに加わりますが、彼のようなスーパースターがバンダに入るというのは日本では滅多にない機会ですから、この贅沢な共演にぜひご期待ください!

「スパイラル」vol.53(2017年7月1日発行号)より転載/取材・文 榊原律子

ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第129回

2017年 9月23日 (土) 14:00開演

指揮:ヘルマン・ボイマー
トランペット:マティアス・ヘフス

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」
ケルシェック:ラッパは鳴り響き(仮題・日本初演)
ヤナーチェク:シンフォニエッタ

ページトップへ